岡山市議会議員・元衆議院議員・元内閣府副大臣・首相補佐官・キリスト者・ 自由と責任の会代表

p1070526.jpg 父の信念を語り、そして皆様のご支援をお願いする次男の熊代義。 speech.jpg 市議会での核心を突く質問。鋭い『くましろ昭彦』。 90c38e7e89e604.jpg 女性や弱者に心優しい、『くましろ昭彦』。 8fba95f8dc58bdf.jpg 普段は、「ニッコリ」。優しい、『くましろ昭彦』。 img20190324204332840870.jpg 永遠の52歳 くましろ昭彦

 
科学
CO2の燃料転換に希望21.10.03日経 文責熊代
交通機関が使う燃料は世界の燃料の生産量の9%。
ガソリンの代わりにメタノールを動力源にする研究に手応え。
 
 
経済政策
 
◎  日本を実力に相応しい豊かな国にする為の提言 野上浩三
 
一 現状認識
日本は、昭和時代の後半には「豊かな国作り」が可能な力を備えていた。
しかし、一方で重大な誤りを犯したために経済構造に重大な欠陥が生じた。
その為、令和の時代の今も、実力に相応しい豊かな国なっていない。財政赤字が累増し、国民の将来に対する不安が増大し、実質労働賃金は先進諸国の中で最も低くなっている。
重大な誤りに因る経済構造の欠陥とは以下の三つである。
第一の欠陥:株式市場の長期低迷
株式市場は国家経済の心臓である。わが国ではその心臓が機能不全に陥り、株価の長期
低迷が続いている。その結果、本来生まれるべき時価総額が得られず、わが国は甚大な「得べかりし利益」を失っている。アメリカ経済は好調を続けているが、これには株式市場の活況で時価総額が累増していることが大きく貢献している(基礎情報の4及び5参照)。
株式相場は低金利の下では上昇するのが道理であるが、わが国では長期のゼロ金利下で
も株価の低迷が続いている。これは、健全な投資家が平成バブルの崩壊で甚大な損失を被ったために「株式投資は危うい」と思い込んで株式市場から集団離脱し戻って来てないからである。わが国の株式市場は外国人投資家と日本人の短期投機家に蹂躙され、本来の安定成長が不可能になっている。
健全な投資家を呼び戻すには、「株式投資は危うい」という固定観念を払拭することが先決である。この固定観念を生んだ原因は平成バブルである。従って、このように特殊で悪質なバブルの再発は有り得ないことを示すことが重要な解決策になる。
その場合の問題は肝腎の平成バブルの原因が解明されていないことである。これまで出版された平成バブルに関する研究書はいずれも原因究明に成功していない。それは最も重要な原因であるエクィティー・ファイナンス(以後E.F.と省略)の弊害が見落とされているからである。
E.F.は、長期借入と社債の発行と同じ長期資本の調達方式の一つであり、実施するには非常に厳格な基本に基づくことが要求される。しかし、一九六八年にアメリカから導入された際に、増資の一形態の「時価発行増資」と誤訳され、それが原因となって、E.F.の重要な基本が悉く逸脱され多くの弊害を引き起こした。最大の弊害が、多くの企業に膨大な量の不要不急の長期資本を調達させ、使い道が無く、株式投資や不動産投機を行なわせ、平成バブルを引き起こしたことである(基礎情報の1及び2参照)
第二の欠陥:過度の円高
一九八五年のプラザ合意(注記の12参照)に於いて日本政府は円高志向を表明した。このことが国際的に「日本は強い円を希望している」という観念が定着し、現在に至るまで円を過度に強くしている。特に、大量に存在する国際投機資金の餌食にされている。
過度の円高は日本企業の国際競争力を弱め、実力に見合った収益力を実現させない。その結果、企業は研究開発や設備投資を行なえず、労働賃金や配当を低く抑えざるを得なくなっている(基礎情報の8参照)
日本政府の円高志向は、国際通貨制度が固定相場であった代の観念に囚われていたからであると推測される。しかし、現在の変動相場制の下では、為替レートは、アマチュア・ゴルフのハンディキャップのようなもので、国家間の実力の差に応じて変動すべきものである。現在のわが国は実力以上のハンディキャップを申告し、不利なプレーを続けているようなものである。
第二次安倍政権によってこの点に関する正しい認識がなされたようである。過度の円高が多少は是正され、株価や景気も多少は回復した。しかし、円が国際投機資金に狙われ易い体質になっているためにゼロ金利政策を継続して円高を防圧せざるを得ない。ゼロ金利は、高齢者層の金利収入を奪い、個人消費を停滞させるという二重の不幸を招いている。
第三の欠陥:企業統治機能の喪失
代表取締役社長制度は、独裁的なトップが生み、企業の統治機能を喪失させ、能力本位のトップの選任を妨げている。この機関は戦後昭和二五年の過渡期に拙速に設けられた日本だけのものであり、国際標準に悖る制度である(基礎情報の10参照)。
 
二 提言
わが国を実力に相応しい豊かな国にする為に、株式市場の長期低迷、過度の円高、企業統治機能の喪失の三つの課題の解決に取り組むべきである。
(一)株式市場の長期低迷について
第一に、E.F.の在り方を、アメリカに於ける実施状況に照らして抜本的に改める。E.F.の法制度を整備するとともに、E.F.の監督機関に日本銀行を加える(基礎情報の4参照)。
第二に、東京証券取引所の在り方を、健全な長期投資家を重んじる形に改める(基礎情報の4参照)。
第三に、その上で、日本の投資家を市場に復帰させるための次の施策を講じる。
先ず、全国民に、種々の手段を使って、次の二点を説明して納得を得る。
1.現在のわが国の株式市場の低迷は技術的な原因に因るもので本質的なものではないこと。技術的な問題とはE.F.という上場企業の長期資本手段が誤用されて平成バブルを発生させ、その崩壊によって投資家が甚大な損失を被って株式市場から離散してしまい株式市場そのものが破壊されてしまったこと。(基礎情報の3参照)。
2.株価が本来の上昇軌道に戻ると時価総額が大幅に増加すること。財政収入の増大、企業の設備投資・研究開発の積極化、労働賃金・配当金の支払増、個人消費の増大、年金基金の運用利回りの向上などに貢献すること(基礎情報の5参照)
次いで、投資家に対して税法上の恩典を与える。
個人投資家に対しては、株式市場が正常化するまでの期間で良いので、配当と売却益にかかる税金の軽減。
機関投資家に対しては、保有株式に適用されている時価会計を止め、以前の低価法を認める(基礎情報の6参照)。この措置により、代表的な機関投資家の生命保険会社は株式市場に復帰し、株式市場の正常化の牽引力になる。  
 (二)過度の円高について
プラザ合意と同様の蔵相会議を開いて、為替レートを日本経済の実力に相応しい水準に再調整する。目的とする為替レートは一㌦=一五〇円である(基礎情報の9参照)
日本は現在、為替レート面で、プラザ合意の時点でアメリカが陥っていたのとほぼ同じ不利な状況に陥っている。それは、財政赤字の増大、企業収益力の低下、労働賃金の低さ、公的年金制度の窮状、株式市場の低迷等の事実に反映されている。
円ドル・レートはプラザ合意当時1㌦=二五〇円と、わが国に有利で、わが国は好景気を享受できた。それが現在は1㌦=一一〇円の大幅な円高になっている。わが国はプラザ合意時のアメリカと同じ主張をすべきである。
国際会議の開催に持ち込めなくても、アメリカに訴えるだけで、日本が強い円を望んでいないことが世界に理解され、安易に国際投機資金の餌食にされることが無くなる。
中国が管理変動相場制から完全な変動相場制への移行することを要求することも重要で
ある。
 幸い、わが国には『通貨烈烈』(船橋洋一著、朝日新聞社刊)という貴重な手引書がある。この中に多くのヒントが書かれている。ベーカー財務長官とダーマン財務副長官の存在もその一つである。わが国にもこのような傑物が出て来て欲しい(基礎情報の8参照)
為替レートの適正化によって労働コストを含めた輸出競争力が回復し、企業の収益力が
回復して、労働者の賃金を先進国並みの水準に引き上げる余裕が生まれる。また、ゼロ金利方策から解放され、国民の貯蓄に金利が生まれ、個人消費の増大に繫がる。
(三)企業統治機能の喪失について
代表取締役社長制度を止め、世界標準の二階層制(注記の11参照)にして取締役会と経営執行陣営との関係を適正化する(基礎情報の10参照)
これにより、企業統治機能が発揮されて東芝事件や日産のゴーン事件などは防止され、能力本位に社長が選任されるようになる。
 
三 提言のための基礎情報
 E.F.に関する情報が多くなっているが、これは重要であるばかりでなく一般には未知の事が多いからである。為替レートの問題も同じく重要ではあるが、周知の事実が多いので情報はその分少なくなっている。代表取締役社長制度の問題は、問題点が明瞭であり多くの情報を要しない。
 
基礎情報の1: E.F.の本質と基本及び基本逸脱の実態
1.E.F.の本質
E.F.は、長期借入や社債発行と同じく長期資本を調達する方式である。但し、E.F.には他の二つの方式と本質的に異なる大きな相違がある。それは、E.F.によって発行される新株は
日本銀行券に匹敵する有価証券であることである。しかし、次のように日本銀行券には無い恐ろしさを備えている。一九八六年~九〇年のバブル発生が正にこの恐ろしさが現実のものになったのである。
①発行価格の基礎になる時価が不当に高められて偽札的になる恐れがある。
②発行量にも償還期限にも制限が無いので発行量が過剰になり易い。
③日本銀行の管理対象にならないので、発行量が大きい場合でも統御不能である。
従って、E.F.は日本銀行が関与して発行量をコントロールすべき方式である。
アメリカではE.F.は信託義務(Fiduciary Duty、注記の7参照)に由来する厳しい基本に基づいて実行されている。
しかし、わが国では一九六八年にE.F.が導入された時に「増資の手段」と誤解され、「時価発行増資」(注記の5参照)と誤訳されてしまった。そのため、法制面で何の措置も行なわれず、それまでの額面増資(注記の2参照)の関連条項の中の都合の良い部分のみが援用されるに止まった。その結果、E.F.の基本が悉く逸脱され甚大な弊害を引き起こした。最大の弊害が平成バブルの発生である。
このように拙速に導入された背後には、資本市場で地盤を築きたい証券業界と経済の国際化を控えて自己資本の充実を急ぐ産業界の都合が有った。
最悪の事態が出来したのは一九八六~九〇年の五年間である。E.F.による資本調達額は約七〇兆円にのぼった。当時の貨幣乗数(注記の4参照)を乗じると五〇〇兆円もの資本が金融市場を駆け巡ったことになる。金融バブルが発生して当然であった。 
2.E.F.の基本と基本逸脱の実態
E.F.の実施に際しては証券会社が仲介業者となるが、当時の証券会社は公共精神に欠けていた。証券会社は次のような話法で上場企業にE.F.の実施を持ちかけた。
「今増資すれば、コスト・ゼロ、使途自由、返還無用のカネが好きなだけ調達できますよ」
勧誘された企業は、財務部主導で「やらなきゃ損する」とばかりに応じた。その結果が以下に紹介するような基本逸脱である。
第一の基本:新株発行の価格は発行会社の実力を反映したものでなければならない。
基本逸脱の実態:最悪の基本逸脱は証券会社による株価工作であった。E.F.を行なう発行会社が決まると、先ずは市場から発行会社の株式を買い上げて時価を大幅に上昇させ、そこで発行価格を決めた(参考データの表-1参照)。次ぎに、投資家が新株の購入代金の払込みを終える一定期間の待機期間(注記の8参照)には、この期間に特認されている株価安定操作を利用して時価を嵩上げして発行価格が時価を下回らに用にした。それのみでなく、過剰に時価を引き上げて投資家に益が出るようにした(参考データの表-2参照)。 
第二の基本:調達した資本は設備投資や研究開発、企業買収などの、他の手段で調達した資本では実施不可能な目的に限定される。
基本逸脱の実態:わが国では当時は一般的に設備過剰で長期資本の需要は余り無かったのに、大量のE.F.が実施された。その結果、企業の手許に多額の使い道の無い資本が累積した。資本を遊ばせてもいかず、これも財務部主導で、株式投資や不動産の投機に流用した。これが平成バブルの主因となった(基礎情報の3参照)。
これらの投機は一時的には大成功を収め「財務の時代」ともてはやされた。しかし、平成バブルの崩壊と共に水泡に帰した。平成バブルの崩壊によって全ての投資家が甚大な損失を被り株式市場から離脱したが、これもその一環である。 
第三の基本:調達した資本に対しては相当の対価を支払い、資本調達の目的が達成されたら返還しなければならない。
基本逸脱の実態:E.F.が時価発行増資と誤解されていたために、増配も資本の返還も殆ど行なわれなかった。アメリカでは増配も返還も適切に行なわれている。特に資本の返還は「自社株式の買入れ」(注記の6参照)の形で実現されている(参考データの表-8参照)。
 
基礎情報の2: 証券会社のE.F.の基本に背く行為
わが国では、E.F.について、証券会社による違法スレスレの行為が横行した。E.F.の業務は、旧株と殆ど差の無い新株を一定期間に大量に捌く必要があるので、本来は証券会社にとって非常に困難な業務である。しかし、わが国では株価工作をはじめ、E.F.の基本に背く行為のお蔭で、困難どころか極めて容易で儲かる業務になった。
(1)発行会社に対する過剰なサービス
株価工作の中でも許し難かったのは、E.F.新株が「購入代金払込みの時点で必ず儲かる」状況を恒常化させたことであった(参考データの表-2参照)。「時価発行銘柄は買い!」という言葉が流行語となり、いくら高い発行価格のE.F.新株でも飛ぶように売れた。
E.F.業務が非常に儲かるようになったために証券会社間で熾烈な幹事争いが行なわれた。
証券会社は発行会社のために、株価工作は勿論のこと、株式持ち合い(注記の3参照)の仲介、損失補償(注記の9参照)、飛ばし(注記の10参照)などの形で協力した。
政財界の大物や得意先の法人や個人などに対しては、E.F.新株を優先的に割当てた。要望があれば自社のファイナンス・カンパニーを利用して購入資金の提供も行なった。
その咎めは山一證券や大阪や証券の経営破綻となって現れた。
(2)特定の顧客や有力者に対するE.F.新株の優先割り当て
E.F.新株の割当ては証券業者の自由裁量に任されている。従って、証券会社は堂々と、「購入代金払込みの時点で必ず儲かる」E.F.新株を自社に有利になる筋に割り当てた。
E.F.の第一次ブームの一九七二~七三年には「E.F.新株が購入代金払込みの時点で必ず儲かる」状況は始まっていた。このブーム時に、大手証券会社は大量のE.F.を行なったが、その実態は驚くべきものであった。
日興證券の新株の場合は代金を払い込む時点で既に六一%も値上がりしていた。大和証券の新株は五四%、野村證券の新株は四九%の値上がり率であった。これは、例えば日興證券のE.F.新株を買って直ぐに売れば自動的に六一%の値上益が得られたことを意味した。
確実にこのように大きな儲けが得られるE.F.新株が、大量に、政財界の大物や得意先の法人や個人などに優先的に割り当てられたのである。証言業界の政財界に対する発言力は強まり、E.F.の矛盾も指摘されないままになる。
(3)一九八六~九〇年の五年間(平成バブル発生期)に、証券会社はE.F.で二兆二七四八億円の資本を調達した。調達された資本は株価工作や得意先へのサービスのために使われた。証券会社にはE.F.絡みで多くの仕事が生まれ、営業利益は膨大なものに上った。この五年間に証券大手四社が得た営業利益は約五兆円に達した(参考データの表-3参照)。当時、野村證券の一九八七年の営業利益が四九三九億円にのぼり「東芝、新日本製鉄、東レ、三菱重工、リコー、日産自動車、日本航空の合計額を上回った」と話題になった。役員及び幹部職員には住宅が一軒買えるほどのボーナスが支給されたという噂が流れた程であった。
E.F.は証券業界の長年の夢「銀行に追いつき、追い越す」を実現させた。一方、長期資金の貸付を業務とする長期信用銀行は三行とも姿を消した。
 
基礎情報の3:基本逸脱のE.F.と平成バブルの因果関係について
本提言は、「基本逸脱のE.F.が平成バブルの原因である」という考えを前提にしている。しかし、この考えは現在のところ世の中には受け入れられていない。平成バブルに関する研究書は数多く出版されているが、いずれもE.F.には言及していない。E.F.が専門分野の問題でありかつ関与者が黙秘しているので、部外者には気付かれないのである。
平成バブルの真の原因が「E.F.の誤用」であることが証明されるならば、E.F.の在り方が是正されれば平成バブルの再発は無いことになり、国民の信頼は取り戻される。
従って、以下に平成バブルの真の原因が基本逸脱のE.F.であることの証明を試みる。以下は、基本逸脱のE.F.と平成バブルの因果関係を示す事実である。
(1)E.F.ブームと平成バブル発生の期間が一九八六年から九〇年の五年間で一致している。E.F.による資本調達額の急増に対応して法人の株式投資が急増した。これを受けて日経ダ
ウは一九八六年からの四年間に三倍になり一九八九年末には三万八九一五円の史上最高値
を付けた。一方、バブルが崩壊した途端に法人の株式投資額は急減している。不動産価格
も同様の動きをしている(参考データの表-5)。
(2)E.F.によって発行される株式は日本銀行券に匹敵する有価証券である。そのような株式が平成バブル発生の五年間に約七〇兆円という巨大な規模で発行された。当時の貨幣乗数(注記の4参照)は七~八倍であったので五〇〇兆円もので資本が金融市場に流入したことになる。E.F.が開始されてから以降の累計額は一〇三兆円であり、この五年間にその七〇%が集中的に調達されるという異常さであった(参考データの表-4)。
一方、上場株式に占める法人の株式保有比率は一九八六年~九〇年の間に一八%も増加した(参考データの表-6)。E.F.で調達された資本が株式投資に流用されたことを示している。
(3)通常のバブルと比較しても平成バブルの異常さ、E.F.との因果関係が明白である。
①通常のバブルは、人気の出た単一の資産に集中的に投資される形で発生する。しかし、平成バブルの場合は先ず法人の手許に不要不急の資本が累積し、それの活用の一環として投機が行なわれた。投機の対象は儲かれば何でもよかった。
②通常のバブルは数か月のうちに崩壊するが、バブルの収束には二~三年の長期間を要した。                                       
 ③通常のバブルであれば日本銀行の引き締めで比較的容易に収束する。しかし、平成バブルの場合は日本銀行が強烈な引締策を強行したにも拘らず、非常に長期を要した。その主たる原因は、投機資金がE.F.による自己資金であったために引締政策が効かなかったのである。
 
基礎情報の4:株式市場の重要性と現状の問題点
プラザ合意以降の日本とアメリカの株価の上昇幅には、次の通り一〇倍の差が有る。
        (一九八五年末)  (二〇一九年末)    (上昇幅)
日経平均:  一万三一一三円   二万三六五六円      一・八倍
 NYダウ:   一五四六ドル   二万八六四五ドル   一八・五倍
この大差の原因としては次のような事項における相違いが考えられる。
(1)投資家の数
わが国では平成バブル崩壊後、投資家が株式市場から離散したままであり、外人投資家と短期投機家が相場を動かしている。大衆や機関投資家は離散したままであり、これらの投資家の復帰が無ければ株価の安定した上昇は見込めない。
(2)株式市場及び株式投資の重要性に対する認識度
わが国ではこの重要性に対する認識度が極度に低い。アメリカでは、政府及び全国民ともに認識度が高く、安定的な投資家が存在している。
(3)企業の収益力
 わが国の企業の収益力は円高の影響で低下する一方であったが、アメリカ企業の収益力はドル安のお蔭で向上する一方であった。
(4)新しい成長産業の誕生の有無
アメリカでは、プラザ合意後のドル安の恩恵で経済力が急速に回復し、経済に活力が戻り、新産業のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などが生まれた。
一方、日本では、過度の円高の下で企業は存立を維持するのが精一杯で、新しい産業を生む余裕がなかった。
(5)株式市場のサポート体制
 株式市場の監視・監督体制も日本では東京証券取引所に止まるが、アメリカでは、NY証券取引所は勿論のこと政府及び連邦準備銀行が揃って株価動向に注視しつつ政策を実行している。わが国でもE.F.の実施に関しては日本銀行が関与する必要が有る。
東京証券取引所そのものの在り方にも、二〇一三年に株式会社に改組されて収益事業化したために、次のような弊害が出ている。
①新規上場企業を増やす為に上場基準が甘くなり株式市場の信頼性を低下させている。
②投資家を増やす方法として、外人投資家と短期投資家の便宜を図り、取引を迅速に処理するための機械化を行なった。
③外人投資家と短期投資家に便利になった結果相場の変動が激しくかつ大きくなり、健全な長期投資家の復帰を妨げている。
 
 基礎情報の5:時価総額の重要性と目指すべき日経平均
株式は株式会社の持ち分であり、株式市場に上場されて全て現金化されたと仮定した場合の金額の総計が時価総額である。二〇一九年末の時価総額は六四八兆円、国家予算の六倍の規模である。株式市場が本来の実力を発揮すれば時価総額は急増し、絶大な経済効果をもたらす。
過去三五年間にNYダウと日経平均の間には上昇は幅に一〇倍の大差が出ている。こ
れは、株式市場を正常化すれば日経平均が本来の上昇を遂げ、大きな時価総額を生む可能性が十分にあることを示している。
そこで、目指すべき日経平均を算定し、それに応じた時価総額を試算してみる。
算出方法は、先ず、NYダウの上昇幅の範囲内で日経平均が上昇する可能性のある範囲内における目指すべき日経平均の候補(A)を算出する。
次いで、最近時点の日経平均の一万円上昇当たりの時価総額の増加額(B)を算出する。
最後に、(A)に(B)を乗じることにより目指すべき日経平均の下における時価総額(C)が得られる。
(1)目指すべき日経平均(A)の算定
NYダウの一九八五年末以降の上昇幅(一八・五倍)の一定割合(a)に対応する日経平均の上昇幅(b)を算出し、一九八五年末の日経平均一万三一一三円(c)に(B)を乗じて対応する日経平均(D)を算出する。これらのうち、達成可能な水準として四分の一の六万〇三二〇円以下の日経平均を採用する。
a)       (b)         (c)×(b)       (A
三分の一 ・・・ 六・二倍・・・・・ 一万三一一三円×六・二 = 八万一三〇〇円   
四分の一 ・・・ 四・六倍・・・・・ 一万三一一三円×四・六 = 六万〇三二〇円     
五分の一 ・・・ 三・七倍・・・・・ 一万三一一三円×三・七 = 四万八五二〇円     
六分の一 ・・・ 三・一倍・・・・・ 一万三一一三円×三・一 = 四万〇六五〇円    
七分の一 ・・・ 二・六倍・・・・・ 一万三一一三円×二・六 = 三万四〇九三円
 
(2)次に、日経平均一万円上昇当たりの時価総額の増加額(B)を算出する。
方法は、先ず二〇一一年末(バブル崩壊後の最安時)から二〇一九年末にかけての日経平均の一万円単位の上昇倍率(d)を算出する。
(d)・・・(二万三九〇〇円-八四五五円)÷一万=一・五倍
次いで最近時点の時価総額の増加額(e)を算出する。
(e)・・・六四八兆円-二五一兆円=三九七兆円
次いで、(e)を(d)で割れば、日経平均一万円上昇当たりの時価総額の増加額(B)が得られる。 
(B)・・・三九七兆円(e)÷一・五倍(d)=二五〇兆円
 
(3)目指すべき日経平均(A)と二〇一九年末の日経平均(二万三九〇〇円)の差額の一万円単位の数値(f)を求め、それに(B)を乗ずれば、日経平均がNYダウの上昇幅との対比で可能と考えられる上昇をした場合の時価総額(C)が得られる。
 (a)        (f)         (B)     (C
四分の一:[(六万〇三二〇-二万三九〇〇)÷一万]×二五〇兆円 = 九〇〇兆円
五分の一:[(四万八五二〇-二万三九〇〇)÷一万]×二五〇兆円 = 六二五兆円 
六分の一:[(四万〇六五〇-二万三九〇〇)÷一万]×二五〇兆円 = 四二五兆円
七分の一:「(三万四〇九三-二万三九〇〇)÷一万]×二五〇兆円 = 二五五兆円
NYダウ並みの一八・五倍になったと仮定した日経平均は二四万二五九〇円、半分の九・三倍では一二万一九五〇円という途方もない数値となるので、残念ながら、参考にはし難い。
ここに掲げた事例はNYダウの上昇幅の四分の一を最大とする試算結果である。
その中の日経平均がNYダウの上昇幅の僅か七分の一上昇して三万四〇九三円になるだけでわが国の時価総額は二五五兆円増加する。
努力次第ではNYダウの上昇幅の四分の一上昇は実現可能な数値であり。新型コロナ・ウィルスで多額の財政負担が生じる中で挑戦すべき絶好の課題である。
 
基礎情報の6: わが国の投資家の動向と株式市場に参加しなくなった理由
(1)わが国の投資家の動向
株式市場の活性化には投資家の参画が絶体の必須要件である。しかし、わが国ではその重要な投資家が圧倒的に不足している。その結果、わが国の株式市場の現状は、かつてニクソン大統領時代のアメリカで言われた「株式の死」の状態に陥っている。
参考データの表―7は投資主体別の全国上場企業の株式保有比率の推移を一〇年単位で示している。一九六〇年末と二〇一三年末との比較で注目すべき点が三つある。
①個人投資家が一貫して減少している。
②法人の保有比率はバブル期に増加したが元の水準にもどっている。しかし、生命保険会社の場合は、E.F.導入直後の一九七〇年の一〇・〇%から平成バブル末期の一九九〇年末には一二・〇%へと増加した後、バブル崩壊後は一転して減少を続け二〇一三年には僅か三・七%にまで落ち込んでいる(二〇一八年末の保有比率は三・0%)。
③外国人が、個人の減少分を埋め合わせる形で、一九七〇年の五・八%から二〇一三年の三〇・八%へと急増している。
(2)個人投資家が参加しなくなった理由
①わが国には元来「相場で儲けるのは濡れ手に粟のようなもので健全でない」という思想がある。そこへ平成バブルの発生・崩壊の過程で多くの国民が踊らされて多大な損失を被った。そのトラウマが除去されていない。
②日本の株式市場は未だに平成バブル期の三万八九一五円を更新できず、二〇一九年末でも二万三六五六円に止まっている。この事実が国民の株式投資に対する関心を失わせているという悪循環に陥っている。
③一九六〇年末から七〇年末にかけて個人の保有比率が50・2%から三七・七%へ急減した。これは新株の発行方式が額面発行から時価発行に変更されて増資新株を額面で自動的に割り当てられていた既得権が奪われたからである。
(3)代表的機関投資家の生命保険会社の株式保有比率が急減した理由
①個人投資家の場合と同様に、増資新株を額面で割り当てられる既得権を奪われた。
②低金利が続く中で貸付等の利益が不足したために、保有株式を売却して利益の補充をせざるを得なかった。
③二〇〇一年から企業が保有する株式の評価方法として「時価会計」が適用されたために、株式投資行の有利性と安全性が失われて株式投資を止めざるを得なくなった。
時価会計は、決算期に保有株式の時価が簿価を上回ると差額が利益として計上されて税金が課せられる。時価が簿価より下がれば評価損が出る。その結果、株式投資の有利性と安全性が失われる。
生命保険会社の場合、それ以前の保有株式の評価方式は「低価法」あるいは「時価以下法」であった。この方式の下では、保有株式の簿価は原則として取得価格とされ、時価が上昇しても簿価を付け替える必要は無かった。その上、決算時に保有株式の時価が簿価(取得価格)を下回った場合には、評価損を計上して簿価を時価まで引き下げ得た。そして、その後時価が簿価を上回って値上がりしても変更する必要は無く、値上がり分に対して税金はかからなかった。その結果、機関投資家にとっては、含み益が増えて株式投資は有利で安全な運用手段となっていた。
時価会計は一九九九年に大蔵大臣(当時)の諮問機関である企業会計審議会から「金融商品に係る会計基準」が公表され、二〇〇一年九月から実施された。グローバル・スタンダードとして導入されたが、決してそうではない(田中弘著、新潮新書刊「時価会計不況」参照)。
時価会計を廃止することが、生命保険会社を始めとする機関投資家を再び株式市場に呼び戻す決め手になる。
 
基礎情報の7: 株式市場の正常化のために政府が行なうべき具体的な事項
提言には骨子のみを掲げてあるが、具体的な事項を掲げて置く。
(1)株式市場の健全性を維持するために必要な措置を講じる。
E.F.の関連法制度をアメリカに倣って整備する(参考データの表-8参照)。
②東京証券取引所の在り方を健全な長期投資家を大事にする形に改める。現状は外人投資家や短期回転投資の投機家の便利さを優先した形になっている。特に、株式を商品並みの扱いにしている(コモディティー化)現状は早急に改める必要が有る。
③公的年金の基金の運用手段としての株式投資の位置づけを明確にし、個々の優良銘柄を独自に調査して投資する体制にする。
④インサイダー規制(注記の1参照)をアメリカ並みに緩和して、実質的に株式投資を禁じられている公務員や民間の上級職員に投資機会を開放する。現行の規制は有望な投資家を排除するのみでなく、株式投資を好ましくないものと見なす一因になっている。
⑤国民の株式投資に対する関心を高めるために税制面のメリットを与える。
(2)証券業界に対して、E.F.に関する過去の不適切な行為の反省を促し、今後のE.F.の正しい実施に向けた指導を行なう。
(3)全国民に次のような事項を謳った小冊子を配布する。
①株式市場が上昇すると時価総額が増え豊かな国作りに大きく貢献すること。
③日本の株式市場を不振に陥らせている真の原因が、E.F.が誤まった形で実施された結果生じた平成バブルであること。E.F.は是正されるので、今後はこの懸念は無くなること。
 
基礎情報の8: プラザ合意に於ける日本政府の円高志向
1.プラザ合意が引き起こした過度の円高
船橋洋一著『通貨烈烈』には、プラザ合意及びそれ以降の数年間に日本の政府が取り組んだ円ドル問題の経緯が正確かつ克明に述べられている。
一九八五年のプラザ合意において、日本政府は中曽根首相の指示の下、強い円を希望する意図を表明した。目標は合意前の一㌦=二五〇円から一㌦=二〇〇円前後の円高にすることにあった。そのために強力な「ドル売り円買い」を実施した。
その結果、円は国際投機資金の餌食にされ、過度に強くなった。円は一九八五年のプラザ合意時の一㌦=二五〇円から二〇一一年の七五円まで続落し、現在でも一㌦=一一〇円の円高になっている。
円高こそが日本経済を長期低迷に追い込んだ最大の原因である。
『通貨烈烈』には、アメリカがプラザ合意を成功させるまでのプロセスが克明に述べられている。わが国が為替レートの適正化を実現する上で、非常に参考になる情報や戦術を学ぶことができる。
2.わが国の輸出企業が陥った苦境
苦境の厳しさを、製品の原価を五万円、アメリカ市場の販売価格を二五〇ドルと仮定した事例で示す。
プラザ合意前の一㌦=二五〇円の下では、一万二千五〇〇円の利益(=二五〇×二五〇円-五万円)が得られた。  
円の最高値時の一㌦=七五円の下では、一転して三万一二〇円の損失(=二五〇×七五・
五二円-五万円)となった。
現在の一㌦=一一〇円の下では、引き続き二万二千五百円の損失(二五〇×一一〇円-
五万円となっている。
企業はこの苦境を技術革新と労働賃金の圧縮で切り抜けてきた。生産拠点を労働力の安い発展途上国へ移しもした。日本企業の底力が不可能と思われる存続を可能にした。
3.気付かれていない円高の弊害
労働賃金への悪影響
労働賃金も輸出商品の主要なコストとして為替レートの影響を大きく受ける。一㌦=一一〇円の下では労働賃金はプラザ合意の前よりも二・二七倍高くなっている。従って、企業には現在でも従業員の賃金を上げる余力など全く無い。
その結果、日本の実質賃金は先進諸国の中で最下位になっている。OECD作成の一九九七年を一〇〇とする二〇一六年までの二〇年間の主要先進国の実質賃金の推移は次の通りである。
スウェーデン:一三八、オーストラリア:一三一、フランス:一二六、イギリス:一二五、デンマーク:一二二、ドイツ:一一六、アメリカ:一一五、日本:九七。
日本は最下位、しかも唯一実質賃金が減少している。これは円がまだまだ強過ぎる結果である。二〇二〇年に中国で新型コロナ・ウィルスが発生した。その時に中国に部品の製造を委託している日本の企業が生産中止に追い込まれたのも円高の弊害である。
これでは企業が本来の実力を発揮できず、従って株式市場を低迷させてしまう。
新型コロナ・ウィルスの被害で判明した事実
2020年初頭にわが国を襲った新型コロナ・ウィルスによって、重大な事実が明らかにされた。自動車産業を始め多くのメーカーが部品を中国から輸入に大きく依存している事実である。その結果、自社製品を完成させることが不可能となり、工場を閉鎖する事例が続出した。また、食料品など日常の必需品の多くも中国からの輸入に依存している。
これは、正にわが国の製造業や農業が過度の円高によって国際競争力を失っていることの弊害である。
それとは逆に、中国の元は完全な変動相場制に移行しておらず、不当に有利な輸出が可能になっている。
わが国はプラザ合意における失敗を隠蔽するためか、為替レートの妥当性に関して公言することを憚り過ぎる。国際的に適切な為替レートの実現を訴える必要が有る。
基礎情報の9:適正な為替レートの算定
1.適正な為替レートの判断基準
一九七三年に国際通貨制度は変動相場制への画期的な変更を遂げた。しかし、長年続けられてきた固定相場制の影響は根強く、プラザ合意当時わが国の中曽根首相及び通貨当局の中には「強い円は日本の国益」という観念が残っていた。その結果、プラザ合意において自ら進んで「円を強くしたい」という意向を表明した。 
しかし、変動相場制の下では為替レートは国家間の経済力とりわけ輸出競争力によって随時変動すべきものであり、ゴルフのハンディキャップに類似している。ゴルファーが不利なハンディキャップでは相手に立ち向かえないように、輸出企業も不利な為替レートでは国際競争には太刀打ちできない。変動制相場制の下で用心すべきは大規模な国際的な投機資金の存在である。彼等は為替レートなど自分たちの有利なように操縦してしまう。
わが国は早急に企業が適正な利潤を挙げ得る為替レートの試算を行ない、その結果に基づいてプラザ合意に匹敵する合意を得るべきである。
なお、その場合の企業の適正な利潤とは、企業自身が将来に向けた設備投資や研究開発を行なう為の資金、国際的に妥当な労働賃金、株主への妥当な配当などが確保できる利潤でなければならない。
わが国は、プラザ合意の数年前の段階で、採算を度外視した輸出を行なって先進諸国から「秩序ある輸出」を要求された。今後とも適正な為替レートと「秩序ある輸出」は両立させなければならない。
2.為替レートを適正化する際の目標値
為替レートの適正な水準に関しては、利害の及び方が輸出関連部門と輸入関連部門とでは全く反対なので、算定が困難である。
しかし、次のような根拠から、目標値は一㌦=一五〇円とすべきである。
①プラザ合意前の為替レートは一㌦=二五〇円余であった。その為替レートの下でわが国の経済は好況を満喫していた。それをアメリカが不満として円高を要求して来た結果現在の為替レートが一㌦=一一〇円になっている。日本の現状はプラザ合意時に陥っていたアメリカの状況に酷似している。
②日米間の株価の勢いにも、当時と現在とではで大逆転となり天地の差が生じている。
当時、日経平均は一万三一一三円であった。NTT一社の時価総額でカリフォルニア州が買収出来るという話題まで生まれていた。日経平均は現在、二〇一九年末現在で二万三六五六円(一・八倍)に過ぎない。片や、NYダウは当時一五四六ドルドルと低迷していた。それが現在は 二万八六四五ドル(一八・五倍)と絶好調である。
③プラザ合意後に、ドルの値段が一㌦=二〇〇円を下回った時点で日本政府は驚愕して円高阻止に必死に取り組んだ。その事実から判断して一㌦=一五〇円は妥当な水準である。プラザ合意後の国際会議における日本の主張、アメリカの財界人や知識人の意見も一㌦=一五〇円前後であった(『通貨烈烈』参照)。
④プラザ合意から二年ほど経過した時点における購買力平価の観点から妥当とされた為替レートも日本の輸出企業の損益分岐点の限界も一㌦=一五〇円であった。
現在の日本企業の経営は労働賃金を低く抑えること及び海外の安い労働力を利用することで成り立っている。輸出関連企業が適正な収益を上げかつ労働賃金を上げるには相当大幅な円高是正が必要である。
⑤株式投資の世界では、相場暴落後の回復力を算定する法として「半値戻しの○○掛け」という方式が用いられる。不安定要因の多い為替レートにも適用可能と考えられるので応用すると次の通りとなる。[一一〇円+(二五〇円-一一〇円)÷二]×〇・八≒一五〇円。
 
基礎情報の10: 代表取締役社長制度
 代表取締役社長は日本だけの独裁的なトップを生みやすい機関である。戦後間もない昭和二五年の商法改正で便宜的に導入された。人を得ないと株式会社に備わっている企業統治機能を喪失させてしまう。
世界標準の株式会社は取締役会が業務執行陣営を監視監督する形の二階層制(注記の11参照)になっている。しかし、わが国の代表取締役社長制度の下では、代表取締役社長が取締役会と業務執行陣営の双方の権限を実質的に全て掌握している。これでは取締役会が業務執行陣営を監視監督することは期待できない。企業統治機能を喪失させた事例は枚挙にいとまがない。古くは三越事件、近年では東芝事件、日産のゴーン事件が典型的な事例である。
日産自動車の再建に剛腕を発揮したゴーン氏の場合、再建途上では代表取締役社長の独裁的な権限が効果を発揮した。しかし、その後の勝手極まる会社の財産の私物化はこの制度の負の側面を赤裸々に露見させた。ゴーン氏は、ルノーのトップ経営者だったのであるから、この制度が矛盾していることや国際基準に合致しないことには気付いていた筈である。しかし、一旦代表取締役社長の座に就くとその魅力に負けてしまったのであろう。
わが国の法務省や法制局もこの制度の矛盾を認識しているらしい。しかし、提言しても経団連(代表取締役社長の団体)に反対されるのが落ちだという。商法学者は一体何をしているのであろう。
この制度の弊害は、独裁化の他にも、後継社長が能力本位に選任されないことや、職員の人事評価が公正に行なわれないことの形で出ている。これでは企業が本来の力を発揮できず、株式に本来の価値が生まれない。
 代表取締役社長制度は戦後の混乱期の昭和二五年の商法改正時に導入された。株主総会の権限を移されて権限が集中した取締役会とのバランス上、業務執行責任の権限強化を図る必要があったのである。しかし、今やグローバル化などで状況は一変している。世界標準の二階層制に変更すべきである。
                                (完)
 
参考情報
一 注記(拙著「国民年金を万全にするための株式投資論」から転載)
1.インサイダー取引(規制) 
会社の未公開の重要な情報を利用した有価証券(株式はその典型)の不正な取引に関する規制。会社関係者がその立場を利用して、会社の未公開の重要な情報が一般に公表される前に有価証券を売買することは、一般の投資家に比べ著しく有利になる。投資家保護の観点から、このような不公正な取引を禁止する規制である。
しかし、わが国では本来の規制の他に、官庁や金融機関や大企業が自主的に一定の職員に株式投資を禁ずることが行なわれた。いわゆる自主規制であるが、これは厳し過ぎ、優良な長期投資家を株式市場から排除するという結果をもたらした。すなわち、株式投資そのものを禁止するのであるから、これ以上徹底した規制の仕方は無く、疑わしい株式取引など発生する余地は無くなった。金融機関や大企業にとって信用や体面が大事であり、不正の発生を防ぐためとは言え、余りにも姑息な対応の仕方であった。「株式投資は如何わしいもの」という偏見を生んだ。現在では自主規制は風化しているが、明示的な廃止の手続きは為されていないので偏見を残留させているものと考えられる。
2.額面発行増資
額面発行増資とは、額面制度が存在していた時代に、株式会社が新株式を額面で発行して資本金を増やした行為である。時価が一〇〇〇円であっても新株式は額面の五〇円で発行され、株主に割り当てられた。株主にとっては、新株が額面で割当てられるので、大きなメリットがあった。もちろん、額面で割り当てられても直ちに九五〇円の儲け(一〇〇〇円-九五〇円)になったわけではない。「権利落ち」と言って、新株の上場時の初値が、次のように、増資の前後において全体で損得の出ないように調整されたのである。例えば、時価一〇〇〇円の新株一〇〇〇株を額面の五〇円で一〇〇〇株割当てられた場合の新株の初値の計算式は[(一〇〇〇株×一〇〇〇円+一〇〇〇株×五〇円)÷ 二〇〇〇株]であり、五二五円となったのである。ただし、増資前に一〇〇〇円していた株式は、発行会社の業績が大きく悪化しない限り、時間の経過とともに元の一〇〇〇円の水準に戻るのが一般的であった。その結果、大幅な値上がり益が得られた上に、配当率が維持されるならば利回りも向上した。  
これは株主の既得権であったが、時価発行制度の下では、新株の株主割当は無くなり、長期保有による値上り益の実現度は大幅に低下した。したがって、額面発行を前提に株式を購入して保有していた株主にとっては時価発行の導入は重大な既得権の侵害となった。
二〇〇五年の会社法制定に際して額面発行制度は廃止された。 
3.株式の持合い
 わが国の株式市場の構造的特徴は、企業が相互に株式を安定的に保有し持ち合っている点にある。歴史的には、一九五〇年代の企業集団再編、六〇~七〇年代の資本自由化に備えての安定株主工作、八〇年代の時価発行株式による資本調達に伴う持合いの三段階を経て形成された。しかし、八六~九〇年の平成バブル期に行なわれた株式持合いは、株式相場が史上最高値を更新する中で株価工作のために大規模に行なわれた点で特筆すべきものであった。平成バブル崩壊後の株価暴落の過程で、持合いの解消を余儀なくされ、その後の株式市場を長期に低迷させる重大な要因となった。
4.貨幣乗数(money multiplier
通貨が一単位増加した場合にマネー・サプライをどの程度増加させるかを示すもので、信用創造乗数とも呼ばれる。通貨が、法人・個人から銀行に預金され、銀行がその預金を使って法人・個人に融資をする。この資金の流れが数回繰り返される過程でマネー・サプライが数倍に増加することを言う。平成バブルが発生した当時の日本の場合は七~八倍とされている。
 5.時価発行増資
株式会社が自己資本を調達するために新株式を発行する場合に、時価を発行価格にする方式である(最後のところで説明するが、これはアメリカのエクィティー・ファイナンスが誤まって増資と呼ばれたものである。その結果多くの矛盾と弊害が出た)。
株式の発行方法としては、二〇〇五年までは額面発行と時価発行とがあった。額面発行の下では、株券に五〇円とか五〇〇円とかの額面が付されており、新株はすべて額面で発行されていた。これが、一九六八年に時価発行制度が導入された結果、額面が五〇円であっても五〇〇円であっても、時価が一〇〇〇円であれば新株を一〇〇〇円で発行することができるようになった。そして、二〇〇五年の会社法制定に際して、額面発行制度は廃止され、現在は時価発行制度のみになっている。
なお、時価発行制度の下でも、新株を時価未満で発行することも可能である。株主総会の特別決議によって時価未満で発行する有利発行や株主割当によって時価未満で発行する場合が有り得る。しかし、時価未満発行は手続上の困難性および株主割当は資金量の制約から実行性は乏しい。
わが国では、企業の自己資本を即効的に充実して国際競争力を強化する目的で、一九六八年に導入された。そして、平成バブル崩壊後の一九九二年まで、二五年にわたって資本市場で隆盛を極めた。
発行会社の自己資本充実の為には効果的であったが、株主・投資家には不利になりやすい側面を有している。その上、わが国では規制する法制度が不備で基本が逸脱されたため、弊害も多く発生した。
なお、わが国では時価発行制度を時価発行増資と呼ぶことが一般化しているが、元の米語はequity financingであり、資本調達の手段を意味する。時価発行増資と翻訳された結果、増資と誤解されて本来の基本が守られなくなり多くの弊害が引き起こされた。プレミアムという概念も誤訳の産物であり、本来は調達された資本の内の額面相当部分が資本金に組み入れられれば済む話であった。そうなれば、資本金に繰り入れられない部分の返還義務も明確に認識されたものと思われる。
equity financingは、正しくは「時価発行株式による資本調達」あるいは「時価発行制度による資本調達」と訳すべきである。米語のままエクィティー・ファイナンスとするのも良いと思われる。
また、エクィティー・ファイナンスに類するものに転換社債とワラント債がある。両者とも権利が行使されると株式に成り代わるからである。
6.自社株式の買入れ(株式の償却)
会社が自己の株式を取得することは、以前はわが国では原則として禁止されていたが、二〇〇一年の商法改正で自己株式の取得おおび保有(金庫株)が認められた。その結果、株式市場対策、財務戦略、資本政策、事業継承対策などに自己株式を活用できるようになった。
改正の理由は次の通りである。

  • 持合株式の解消が急速に進み、株価下落の一因となっているので、発行会社が売却される自社株の受け皿になれば株価の下落を防止できる。
  • 株式を対価とする企業組織再編を行なう際に、従来は新株発行方式による割当てが原則とされていたが、金庫株(自社の株式を取得し、資産として所有する場合の株式、treasury stock)を解禁すれば、配当負担の増加や株価の下落を生じさせずに実行できる。
  • 大株主や提携先が株式を手放すと、株価が下落し買収がされやすくなるが、自己株式の取得で敵対的買収などを防ぐことができる。

本来は、自社株式の買入れは時価発行制度に付随する義務であり、時価発行制度の導入時に認めるための法改正が為されるべきであった。しかし、時価発行制度が「増資」であると誤解されていたために法改正には至らなかった。
アメリカでは自社株式の買入れが大規模に行なわれ、時価発行株式による資本調達額と同等あるいはそれを上回る規模になっている。自社株式の買入れは、一株当たり株主資本の額を増加させて株式の価値を高め株価を堅調に推移させるので、株主にとって大きなメリットになる。
わが国でも、近年自社株式の買入れによる資本の返還が行なわれるようになったが、これまでに行われた時価発行株式による資本調達額に比して圧倒的に不充分である。アメリカにならって、時価発行制度の基本的な義務として位置づけることが必要である。
 7.信託義務(Fiduciary Duty
 信託契約に基づいて発生する受託者の義務のこと。信託契約とは他人に一定の目的に従い、財産の管理・処分をさせるため、その他人に財産権(経済的な利益を得ることを目的とする権利)を移す契約である。財産権は受託者に移るが、所有権は委託者に残る。
 時価発行株式による資本調達の場合は、資本(信託財産)が投資家・株主によって発行会社に委託され、受託者である発行会社は投資家・株主のためにその資本を管理・処分する。但し、所有権は投資家・株主に残る。
8.待機期間
額面発行制度の下で、株主が増資要綱を見て増資に応ずるか否かを判断するために、商法の第二八〇条の三の二に定められていた、増資要綱が決定されてから払込期日までの期間のこと。額面発行の下では、時価が額面を割ると増資が認められなかったために、増資を無事完了させるために必要とされた措置であり、この期間は株価安定操作が認められていた。
時価発行制度は資本調達の手段であり増資ではないので適用されるべきではなかったがequity financingが増資と誤訳されたために時価発行制度の下でも継続され、結果的に株価安定操作が悪用され、株価工作を横行させる原因となった。会社法の下でも、依然、第二〇一条で同様の規定が残されているので即刻廃止する必要が有る。
9.損失保証
証券会社が特定の個客に対して、株式投資で損失を被った場合に損失を補填することを事前に約束する行為。事後的な損失保証は以前から行なわれていたが、証券取引法の禁止事項には該当しないと考えられていた。しかし、平成バブル崩壊後に明るみに出た損失保証は非常に大きな規模のものであった。平成バブル期に損失保証を行なった証券会社の数は二一社にのぼり、補填の金額は一七二〇億円に達した。なお、現在は事後の損失保証も違法となっている。
10.飛ばし
得意先(主に企業)に株式を購入して貰った後で値下がり損が出て企業の決算に支障をきたすような場合に、決算日の直前に証券会社が企業からその株式を購入価格で引取り、決算が終了した時点で再び企業に同値で売り戻すことによって、損失を表面化させない行為である。平成バブル崩壊後に株価が回復しなかったので大問題に発展した。山一證券は一九九七年一一月に破綻したが、原因は、バブル期に行なわれた「飛ばし」の義務を履行したことによって出た多額の損失であった。
11.二階層制
 株式会社制度に本来的に備わっている仕組であり、上位の取締役会と下位の執行役員陣(トップは主席執行役員、Chief Executive Officer, CEO)によって形成される。取締役会が会社の経営に関する基本方針を決め、執行役員陣はその方針に沿って業務の執行を行なう。取締役会はCEOの任免および執行役員陣の業務執行状況の監視・監督・評価を行なう。二階層制が正しく機能するならば企業統治機能が発揮される可能性が高まる。
12.プラザ合意
 一九八五年九月二二日、ニューヨークのプラザ・ホテルで開催されたアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、日本の五ヵ国蔵相会議(G5)における合意事項。合意内容は、
①主要通貨の米ドルに対する秩序ある上昇が望ましいこと、
②為替相場は対外不均衡調整のための役割を果たす必要があること、
③五ヵ国はそうした調整を促進するために一層緊密に協力する用意があることなどであった。その背景には、八〇年代初頭からアメリカの金利が他の主要国のそれに比較して高水準であったためドル高が続き、アメリカの経常収支赤字が増大する一方、日本と西ドイツなどの経常収支の黒字が増加したこと、輸出型企業の業績が悪化したこと、アメリカ国内で保護主義の台頭が懸念され始めたという事情があった。
 
二 参考データ
(表-1)発行価格の異常な高さ(括弧内は最高の発行価格)   (単位 円)
事業会社
日本航空(1708)、伊藤忠(982)、川鉄(866)、新日鉄(689)
三井物産(1184)、アサヒビール(1930)、住友商事(1337)
NKK(776)、神戸製鋼(715)、丸紅(840)
銀  行
富士(3549)、第一勧業(3488)、東京三菱(3266)
三菱信託(4171)、住友信託(4167)、横浜銀行(1680)
千葉銀行(1394)、日長銀(21,893)、日債銀(14,910)
証  券
野村證券(4453)、大和証券(3217)、日興證券(2270)
山一證券(2460)
 
(表-2) 払込期日の時点で確実に儲かる状況(値上り率別時価発行銘柄数)
値上り率
(%)
第一次ブーム
(1972~1973年)
第二次ブーム  (1981~1982年)
第三次ブーム
 (1988~1989年)
マイナス
4銘柄
19銘柄
22銘柄
0.005.00
8
54
115
5.0010.00
14
52
57
10.0015.00
16
24
6
15.0020.00
27
15
9
20.0025.00
7
9
3
25.0030.00
1
7
1
30.0035.00
3
0
0
35.0040.00
1
0
1
40.0045.00
0
0
0
45.0050.00
1
0
0
50.00以上
2
0
0
合計
84銘柄
180銘柄
214銘柄
全体の値上がり率
15.1
7.7
4.4
(注)対象銘柄の選択基準: 第一次及び第二次は発行額30億円以上の大型時価発行銘柄、第三次は発行額50億円以上の銘柄。
 
(表-3)証券大手四社のバブル期の営業利益  (単位 億円)
 
86
87
88
90
91
92
野村證券
3,925
4,939
4,105
4,954
2,376
439
大和証券
2,340
2,928
2,349
3,132
1,193
93
日興證券
1,979
2,417
1,544
2,686
812
45
山一證券
1,706
2,227
1,490
2,410
723
▲366
合計
9,950
12,511
9,488
12,582
5,104
211
 
(表-4)全国上場企業の時価発行増資額        (単位 億円)
 

株式
 
 
転換社債
 
ワラント債
 
合計
件数
調達額
1968
80件
95
 
 
 
95
1969
145
550
 
473
 
1023
1970
203
1380
 
1212
 
2592
1971
147
835
 
1135
 
1970
1972
275
6651
 
1270
 
7921
1973
256
5651
 
5260
 
10911
1974
193
2775
 
2645
 
5420
1975
103
2215
 
5126
 
7341
1976
181
5004
 
2679
 
7683
1977
238
6035
 
3077
 
9112
1978
195
5654
 
6317
 
11971
1979
229
6288
 
9757
 
16045
1980
218
8808
 
6146
 
14954
1981
249
13963
 
11675
200
25838
1982
209
11026
 
11042
1445
23513
1983
72
4715
 
19090
1689
25494
1984
128
8210
 
25194
5296
38700
1985
103
5057
 
32218
8402
45677
1986
76
4000
 
31772
25240
61112
1987
99
13937
 
62573
43079
119607
1988
157
25821
 
75187
50118
151126
1989
227
58303
 
84962
118651
261916
1990
121
19754
 
34982
45273
100009
1991
27
1258
 
13061
46648
60967
1992
   3
40
 
8621
18801
27462
合計
3934件
218025
 
455474
364960
1038459
 
 
(表-5) 平成バブルに関連する諸指標  (1985年=100、%)    
 
 
1985
86
87
88
89
90
91
E.F.による資本の調達額
100
134
261
330
573
219
133
バブル現象
法人の株式投資額
100
270
390
259
373
▲10
▲39
日経ダウ平均
100
142.6
164.4
230.0
296.8
181.9
175.3
不動産価格
100
122.2
215.4
279.0
280.0
281.6
257.1
マネー・サプライ
8.4
8.7
10.4
11.2
9.9
11.7
3.6
消費者物価
100
100.7
100.7
101.4
103.8
107.0
110.4
企業の設備投資
100
103
108
122
141
160
178
 
(表-6) 法人保有の株式時価総額の推移     
(単位 億円、%)
 
 
年度
全国上場企業時価総額
法人保有比率
法人所有時価総額
1970
16兆8000
55.5
9兆3000 
80
78兆0000
64.4
50兆5000  
86
293兆0000
71.6
199兆2000  
89
630兆1000
73.0
446兆1000  
90
393兆6000
73.1
277兆1000  
 
 
 
 
 
 
(表-7)  投資主体別の株式保有比率の変化    (単位; %)  
年 度
1960
1970
1980
1990
2000
2013
金 融 機 関
30.6
31.6
38.2
43.0
39.1
26.7
(うち生保会社)

10.0
11.5
12.0
8.2
3.7
事 業 法 人
17.8
23.9
26.2
30.1
21.8
21.3
(法 人 計)
48.4
55.5
64.4
73.1
60.9
48.0 
外  国  人
1.3
4.9
5.8
4.7
18.8
30.8
個 人 ほか
50.2
37.7
27.9
20.4
19.4
18.7
合 計
100
100
100
100
100
100
(注)1 数値は1960年度は大蔵省、1970年度以降は東証調べ。
   2 金融機関は全銀行、投資信託、年金信託、生命保険、損害保険の合計。
      3「個人ほか」には証券会社および政府などが含まれているが、殆ど個人である。
 
(表-8) アメリカにおける時価発行、新規公開、自社株式の買入れ
                                          (単位:百万ドル)

公募株式発行額
自社株式の買入れ
 
SPO
IPO
その他計
1993
44,220
41,515
92,797
38,215
1994
28,106
29,591
70,710
71,497
1995
52,084
29,666
102,071
96,282
1996
65,265
49,850
143,819
167,029
1997
75,877
43,323
157,966
170,691
1998
71,267
37,201
162,248
222,195
1999
100,545
68,900
262,268
152,379
合計
437,364
300,046
991,879
918,288
       (注)聴取先: 野村證券(NY)及びプルデンシャル証券
 
 
◎ 株式
 
〇 20.04.18日経 拭えぬ二番底の恐怖 スクランブル 17日日経平均大幅高 19897円 36日以来の高値。トランプの発表した経済再開の新指針
 
ボラティリティは依然高水準。恐怖指数=米株の変動性指数VIX40前後。日本版VIX=日経平均ボラティリティ・インディックスは37。新型コロナの感染拡大が本格化する前の1月末に比べると2倍の水準。1610万円の一律給付決める。12兆円超。実体経済や企業業績の悪化をきっかけに二番底懸念は依然としてくすぶる。文責熊代 切り取らず。
 
○ 株式市場を正常に(野上浩三氏の主張)
 
  equity funding(EF)
 
 日本の株式市場は、ニクソン時代の「株式の死」の状況に陥っている。
 
○ NIKKEI 19.12.29sunより  文責くましろ
 
 チャートは語る バブル30年成熟した株 割高さ解消 成長の果実、株主に
 最近の日本株は「身の丈に合った水準」
 1989.12.29 38,915円史上最高。株価収益率(PER株価/一株利益)60倍超 国際水準14-16倍 90年以降暴落 2000年代半ばに修正される。今では利益変動を率直に反映して株価も動く。普通の資本市場。PER14倍台。欧州と同程度。米国18倍台 NISA, 確定拠出年金等の税制優遇充実。しかし、株式から個人投資家がとうざかったまま。企業が生む富が個人に行き渡らない。切抜き。袋に。
 
◎ 金融 
 マイナス金利、邦銀に追い風 上杉素直 日経コメンテイター 191102sat 日経より文責熊代昭彦 素晴らしい記事だ。
 
 191030-31 金融政策決定会合 政策の先行き指針Foward Guidance 有力な選択枝 マイナス金利0.1%の深堀 日銀に預けて置いたら損だの構図を強める。悪弊がこびりついた銀行のビジネスモデルを根本から改める契機に。手数料を稼げるか否か。欧州の銀行、業務粗利益の4-6割を手数料等の非資金利益で稼いでいる。日本は10%台半ば。預金口座の維持に手数料を課すか否か。1つの口座の維持に年4千円程度かかる。
 
◎ 事業承継 
             

     創業者の不安再編を促す 190812mon日経より
◎ファンケル、キリンから3割出資

創業者の池森賢二会長の「不安」が背中を押した。「単なる業務提携よりぜひ株を持ってほしい。」キリンHDの磯崎功典社長に池森会長82歳が要請。今年。池森氏等が保有する株式総数の30.3%を1293億円でキリンが取得する。池森氏が化粧品販売を始めたのは1980年。94年にはサプリメント事業を始め化粧品ならぶ主力に育てた。一代で売上高1千億円規模の企業に。65歳の2003年に社長退任。社長はダイエー出身のローソン社長を務めた藤原謙次氏、池森氏は2005年に名誉会長に。07年には中内功氏の秘書を長く務め、池森氏の義弟の宮島和美氏が社長に。08年には蛇の目ミシン工業出身の成松義文氏が社長に。同社の業績は悪化、13年に池森氏は代表権のある会長に復帰。宮島氏を社長に戻した。ドラッグストアなどを中心に店舗の売り場拡大や積極的な広告を展開。インバウンド需要もあり、V字回復。池森氏は復帰時に3年で経営を立て直すと宣言、宮島氏の後任にダイエー出身の島田和幸氏を据え、19年3月に売上高・営業利益とも過去最高に。自分が死んだら会社がどうなるか。ファンケルの将来を託せる信頼できる会社に譲った方が良いとの結論になった。協和キリン(旧協和発酵) を傘下に収めても協和発酵の企業風土を尊重している点に好感を持った。
 
後継者問題増える。
イオンが14年に出資比率を25%から50%超に引き上げ、連結子会社化したドラッグストア大手のウエルシアHD.。創業者の鈴木孝之氏、亡くなる前にイオンの岡田元也社長に託した。イオンのドラッグストア事業の中核になり、業界では首位を争う企業となった。(切り抜き 「資料」に。)
 
○ 2020 世界のこの先 nikkei 19.12.29sun 切抜き袋に。文責熊代(未完)人口増 重心は新興国 三井物産社長 安永竜夫氏30年に向けて経済成長の重心は東南アジアから南西アジア、東アフリカ 人口ボーナス期を迎えるアジアでは経済が成長し、中間層が台頭、高度な医療を求め、新たなビジネスが生まれる。エネルギーの安定供給が必要。人口増地域では。再生可能エネルギーの拡大と天然ガスとの組み合わせが現実的な解。日本は今は課題先進国。環境・エネルギーとヘルスケアでリーダーシップを発揮することが求められている。